ひとくちメモ
日本脳神経外科学会専門医、日本脳血管内治療学会専門医である私が最近の耳よりな情報について意見を交えて書き記しています


脳梗塞に対する一般的に内科的治療とは、”血管にゴミ(血栓)がこれ以上付かないようにする” ”血をさらさらにする” 薬の入った点滴療法を指します。

これは脳血管にゴミ(血栓)が詰まった後、その病変が広がらないようにする治療法なのです。この点滴治療のみで完全に回復することもありますが、多くのケースにおいて大なり小なり後遺症を残すことになります。  

当施設では患者さんに最良の治療をする為、Dynamic CT(ダイナミック CT)を来院時に施行し、後遺症の程度を予測して治療方針を適宜検討します。
この検討については1999年WFITN in Portugal、2000年ASITN in New Orleans
にて口演発表をしています。

今回ご紹介する治療法は病変によれば、詰まった血管が再開通することで順行性の血流がもどり症状もその直後より著明に改善します。しかし発症から非常に早い段階で治療をすることが条件となります。具体的には症例の多くは6時間以内に限られます。(しかし、残存血流が著しく低下してなければ、6時間以上時間が経過していても可能なケースもあります。)その時間内に来院し治療できれば次のような治療法があります。

1,血栓溶解療法
 

血管に詰まった血栓をウロキナーゼ、t-PAという薬を使って溶かす治療です。

平成17年より超急性期(発症より3時間)にt-PA(組織ープラスミノーゲンアクチベーター)の経静脈的投与が可能です。

但し致死的脳出血を引き起こす可能性が高いため厳しい適応基準を満たしている場合のみ投与可能です。脳卒中専門施設での使用が推奨されています。当院では厳しい基準を設け、可能なケースのみ投与しています。しかし出血性梗塞(脳出血)発症率は脳血管内治療の方が少ないです。


2,経皮的脳血管形成術ステント治療について
 

当院では経験を積んだ医師(脳血管内治療専門医)がこの最新治療法に取り組んでいます。この治療法は、わかりやすく言うと風船で血管の細い所または詰まった所を広げる方法です。
カテーテルさえ病変部に到達できれば、すぐに狭窄部を拡張することができます。時間を争う脳梗塞治療においては可能なら考慮すべき治療法と言えます。
一方で風船単独治療の問題点は病変、長さによってはまた再狭窄を起こす場合(総じて20−30%に起こります。)があります。そこで再狭窄を防ぐためにステントという器具を病変部に留置することになります。部位によってはステントを留置できない場合があります。
(ステントは患部の血流を保持し、風船治療の合併症である再狭窄の発生率を低下させる働きがあります。ステントはいい治療法なのですが、現在、頭蓋内脳血管に対する治療として保険診療で施行することはできません。)

頚動脈ステントの現状

2008年4月より頚動脈高度狭窄病変に対して自己拡張型ステント(頭蓋外ステント)を留置するという治療法が保険適応となりました。施行には術者、施設など厳しい実施基準があります。当病院は認定施設です。

これにより同病変をお持ちの方で全身麻酔ができない方、心疾患をお持ちの方などにも治療ができるようになります。我々が治療を始めて約10年の年月を経て、今回はじめてみなさんの力で、ステントを使った脳卒中に対する低侵襲治療法が一部ですが、厚生労働省に認められたわけです。これは患者さんにとって大きな福音になるに違いありません。

Protected carotid-artery stenting versus endarterectomy in high-risk patients. NEJM 2004 Oct 7;351(15):1493-501

Yadav JS, et, al.


  一口に血管内治療といってもいろんな手技、方法があります。ですから、別のページでお話したような脳卒中と思われる症状を自覚した場合には、すぐ脳外科を受診して調べてもらう必要があります。もしあわてて受診してそれが杞憂に終わり異常ないですと言われてもそれでいいのです。もし脳梗塞であれば、これは一刻を争います。ゆっくりとしていては間に合わないことがあります。

上記のような治療法を挙げましたが、時間がかなり経過してはこの治療はできないのです。
(脳組織が死んでしまってはこのようなことをしても意味が無いからです。血流が途絶えているところにかなり時間が経過して再開通すると出血などの危険性が非常に高くなります。出血の危険性について我々はDynamic CTを使ってその判断を行っています。)
2004 2005 chokyu hospital